著作権について弁護士に依頼できる事項は、著作権を侵害した場合やされた場合の紛争対応だけではありません。ここでは、著作権について弁護士ができることを、次の3つに整理して解説します。
①ビジネススキームの検討
②契約書の作成・チェック等
③訴訟・紛争対応
1 ビジネススキームの検討
弁護士に依頼できることとしてまず挙げられるのは、ビジネススキームの検討です。
新たにビジネスを開始するにあたって、著作権に関していえば、例えば以下のような事項を検討します。
・そのビジネススキームは他人の著作物を利用することになるか
・利用することになるとして権利処理(著作権の譲渡を受けたり利用許諾を受けたりして、著作権を利用しても侵害とならないようにすること)が必要か
・権利処理が必要な場合はどのように行うべきか(権利者をどのように突き止めるか、個別の著作権譲渡契約又は利用許諾契約を締結するのか、権利者が定める利用規約で対応可能なのか等)
・ビジネススキームを変更することにより権利処理が不要とならないか
・そのビジネスについて、自社の著作権は発生するか
・自社の著作権が発生する場合、どのように保護するか。
事業部門における経験が豊富な方でも、法律面については思い込みがあることがあります。例えば、資金の出所と「製作(制作)著作」の表示及び著作権の帰属先は必ず一致するとか、データが当然に知的財産権の対象となるといった誤解にはしばしば出くわすことがあります。
一定の資金や労力を投じて新規ビジネスを開始する以上は、法律的な理由による失敗の可能性を低減させるためにも、事前に法的観点を踏まえたビジネススキームの検討をすることが極めて重要です。
2 契約書の作成・チェック等
(1)契約書の作成
1で述べたようにビジネススキームを検討すると、そのビジネススキームに必要な契約としてどのようなものがあるかが定まりますので、ビジネスを契約書に落とし込む作業をすることになります。契約書作成の過程で、ビジネススキーム上決めておくべきであるのに決めることができていなかった点が見つかることもあり、その場合は再度ビジネススキームを検討することもあります。このように、ビジネススキームの検討と契約書の作成は密接に関連しており、契約書がビジネスの設計図のような役割を果たすことも多々あります。
一般に、契約書の役割としては紛争予防がフォーカスされることが多いので、紛争発生の可能性が低いことや契約書作成の時間的余裕がないことなどを理由に、契約書の作成が忌避されることもあります(放送業界では、昔ほどではないにしても、未だ口約束文化が残っていると認識しています。)。しかし、上記のように契約書はビジネスの設計図としての役割を果たすことがあることや、作成の過程でビジネス上の要検討事項が発見されることがあることからすると、基本的には契約書を作成することをおすすめします。
ただし、かなり例外的にではありますが、あえて契約書を作成しない方がいい場合もあります(例えば、出演契約締結時に、口頭約束にすることでワンチャンス主義の適用を争点化させずに実現する場合など。)。このような場合には、リスクをご説明した上で契約書不作成の方針を取ることになります。
(2)契約書のチェック
こちら側としては契約書は不要と考えている場合であっても相手方から契約書の作成を求められた場合には、契約書のチェックは不可避的に生じます。
相手方から提示された契約書の草案は、当然ながら相手に有利な点が多く、それは契約書全体に散りばめられています。このような点を網羅的に見つけ出し、相手方に修正を求めるなどの適切な対応を行うためには、著作権その他の法律について深い知識と豊富な実務経験を有する弁護士への依頼が不可欠でしょう。
3 訴訟・紛争対応
著作権についての訴訟・紛争が発生した場合に、その対応を弁護士に一任することができます。
著作権を侵害してしまった場合でも侵害された場合でも、いきなり訴訟になることは通常なく、まずは手紙や内容証明による請求がなされ、裁判外の交渉から始まるのが通常です。そして、交渉で妥協点を見いだすことができない場合には、訴訟に移行します。
訴訟・紛争はこのような経過を辿ることが多いので、交渉の段階から訴訟を見据え、仮に訴訟になった場合であってもこちらに不利益になる証拠を出さないよう対応することが必要です。
また、訴訟になった場合は、著作権法と訴訟対応について知識経験を有する弁護士に依頼できるかどうかが重要になります。
以上、著作権について弁護士ができることを見てきました。著作権に関する紛争を予防したり紛争の拡大を防止したりするためには、著作権に関する豊富な知見を有する弁護士に、できるだけ早い段階から依頼することが重要です。
Last Updated on 2023年9月11日 by rightplace-media
この記事の執筆者 大平 修司 ライトプレイス法律事務所 2010年12月弁護士登録。都内の事務所に勤務し、金融規制対応その他の企業法務や多くの訴訟・紛争対応に従事。 2016年4月に株式会社TBSテレビ入社。テレビ、インターネット配信、映画、スポーツ、eスポーツなど幅広いエンタテインメントについて、契約法務や訴訟・紛争対応や、インターネットビジネス、パーソナルデータの取扱いに関する業務等を担当。 ライトプレイス法律事務所に関してはこちら https://media-houmu.com/office/ |